細胞機能調節学研究室

 私たちヒトは日常的に微生物に接しているはずですが、通常は感染症にまでは至りません。これは私たちの身体に免疫系という生体防御システムが備わっているからです。免疫系は二つのタイプに分類され、一つは先天的に備わっている自然免疫で、もう一つは後天的に形成される獲得免疫です。どちらも私たちが生きてゆく上で重要ですが、獲得免疫の方がより複雑で高度なシステムです。

 獲得免疫ではT細胞とB細胞からなるリンパ球が、多様な微生物の特徴となる抗原を認識し、特異的な(いわばオーダーメードの)免疫反応を誘導します。その中でも最も基本といえる現象は抗原提示と呼ばれるもので、微生物を樹状細胞等の抗原提示細胞が認識し、細胞内に取り込み(貪食)、その特徴となる抗原を細胞表面に発現し、これをヘルパーT細胞が認識する現象です。ヘルパーT細胞はその後、微生物を無力化するための適切な免疫反応を、他の免疫細胞に働きかけながら誘導してゆきます。その過程で抗原提示されたヘルパーT細胞を含むリンパ球は、活性化されるとともにごく少数の細胞から微生物に対抗するのに必要な数まで増殖してゆきます。

 また微生物と免疫系の間の関係は共進化であり、その結果免疫系はより高度で複雑なシステムを構築してきたわけですが、これは特に獲得免疫において顕著です。ただ抗原提示という現象が獲得免疫の基本であることに変わりはありません。

 さて私たちヒトが保有するタイプの獲得免疫は有顎脊椎動物において広く存在することが知られています。この中で最も原始的で共通の祖先に近く、現存する動物といえるのは軟骨魚類です。したがって獲得免疫の進化において、その初期状態である基本部分を研究するのに最も適した動物は軟骨魚類であると考えています。高等脊椎動物において非常に複雑化している獲得免疫は、その土台となる基本部分が見えにくい状況ですが、軟骨魚類の獲得免疫、特に抗原提示を中心に着目し研究することで、解明してゆきたいと考えています。


研究テーマ
研究室での教育


お知らせ


メンバー

写真

苫名 充

Mitsuru TOMANA

准教授


〈4年生〉

新井舞、大氣朴道、片野凌、加山拓磨、

黒川卓真、齋藤桜子、天坂竜也、出口利恵、

中野翼、舟山優紀



お問い合わせ

メモ: * は入力必須項目です

研究室紹介
おもな関連施設